生命保険を使った相続税の節税策(解約返戻金相当額が相続税評価額であることの活用)

生命保険

前回のコラム(2019年11月3日投稿)に引き続き、生命保険を使った相続税の節税策を、今回のコラムでもう一つご紹介します。

まず具体的な例でお話します。

父から長男への相続をここでは考えます。父には1億円の預金があります。この預金を持ったまま父が死亡し、長男が1億円の預金を父から相続
したとすると、1,200万ほどの相続税が発生します *1 。
*1) 父の財産は預金1億のみ、相続人は長男1人と仮定した場合。

この相続税をなんとかして節税できないものか。

1 そこで父は、以下の生命保険に加入します。
契約者:父、被保険者:長男、保険金受取人:父、保険料は契約時に1億円を一括払い、保障は入院給付金日額3万(死亡時は死亡保険金200万)、保険期間は15年、解約返戻金は1年目9,300万・2年目8,700万・3年目8,000万・・・・14年目900万と年数を経るにつれ減っていきますが、15年目の満期時には1億4百万を受け取れます。

2 そして、父がこの生命保険の加入から14年目に死亡しました。
父の死亡に伴い、父が契約者であるこの生命保険契約(財産の名称は「生命保険契約に関する権利」といいます)は、相続財産として長男に相続されます。では、この「生命保険契約に関する権利」の相続税評価額はいくらになるのでしょうか。
この場合の相続税評価額は解約返戻金相当額と規定されているので、14年目の解約返戻金である900万が相続税評価額になります。つまり、長男は父から900万の財産を相続したことになります。このケースでは相続財産3,600万(相続税の基礎控除額)までは課税されませんので、相続税は発生しません。税務申告も不要です。

3 父の死亡から1年後に、当該生命保険契約は満期をむかえるので、長男は1億4百万を保険会社から受け取ります。

どうでしょうか。

上記の生命保険を活用したことにより、相続税を支払うことなく父の1億を長男は引き継ぐことができました *2 。
*2) 但し、1億4百万を保険会社から受け取った年に、長男には175万の一時所得が発生します。

「そんなにうまく14年目に死亡するものか」という声が聞こえてきそうですが、この生命保険契約に関する権利の相続税評価額は解約返戻金相当額であり、解約返戻金は1年目9,300万・2年目8,700万・3年目8,000万と14年目まで年数を経るにつれて減り、相続財産の評価額が1億から圧縮されていくので、たとえ14年目以前の死亡であったとしても節税効果があることには違いありません。
また、15年間の保険期間中に父が死亡しなかったとしても満期時には1億4百万を受け取れるので、1億が目減りするわけでもありません。

しかし、考慮しておかないといけないリスクが1つあります。
それは、被保険者である長男の死亡です。
保険期間中に長男が死亡すると、200万の死亡保険金を父が受取って保険契約は終了します。
元々あった1億が200万になってしまいます。

従って長男の死亡というリスクをヘッジするために、契約者:父、被保険者:長男、保険金受取人:父、保険金1億の掛け捨ての定期保険(期間15年)に同時加入しておきます。

こうしておけば、長男が父より先に死亡するという万が一の事態がおこったとしても、父は1億を回収することができます。
このリスクヘッジのために保険料が必要となりますが、相続税の圧縮効果の大きさを考えれば、必要経費としては許容の範囲内に収まることが殆どでしょう。

このコラムでは保険期間15年の生命保険を一例として取り上げ、その効果をわかりやすく見てきましたが、同じような効果を得ることができる保険が、保険期間9年のものや4年のものなど様々あり、どれを利用すれば最も効果があるのかは状況により異なります。
また、異なる節税プランを組んだ方が効果的なこともあります。
このコラムに興味を持たれたとしても、専門家に皆様の状況を説明されたうえで、個々人の状況に適した提案を受けられることをお勧めします。

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