相続税の節税のイロハ ~生前贈与の活用~ ②
前回のコラムでは、暦年贈与においては年間110万円の非課税枠があるので、110万円以内の贈与を生前に行うことが相続税の節税策となること、110万といえども子や孫など複数の人に長年かけて計画的に贈与を行うことで大きな節税ができること、生前贈与加算があることを頭に入れておくことや定期贈与とみなされないために贈与契約を結んでおくこと等の注意点があること、についてお話しました。
今回のコラムでは、年間110万を超える生前贈与を行うことについてみていきます。
暦年課税においては年間110万円が非課税枠なので、それを超える贈与を行った場合には、贈与を受けた受贈者に贈与税が課せられます。
例えば父が子に310万円の贈与を行ったとすると、110万円を超える部分の200万円が課税対象となり、200万円に税率を賭けて(この場合は10%)20万円の贈与税が受贈者である子に発生します。
この20万円の贈与税を支払ってでも310万円の贈与をしたことにメリットはあるのでしょうか?
例えば、この父の相続財産が1億円(基礎控除後)あったとしましょう。
310万の贈与をしないまま亡くなったとすると、1億円×30%(この場合の相続税の税率)-700万(控除額)=2300万円の相続税を納めなければなりません(話を簡単にするために相続人は子1人として単純化)。
一方、310万円の贈与を行った後に亡くなったとすると、相続財産は310万円減って9690万円となり、相続税は9690万×30%-700万=2207万円となり、これに贈与時の際の贈与税20万を加えると、全体の税負担は2227万円となります。
従って310万円の贈与をしたことで、73万円(2300万-2227万)税負担が減ったことになります。310万円に対する相続税の税率(30%)と贈与税の税率(10%)の税率の差の分、贈与をしたことの節税効果があったということです。
要するに贈与を行った際の贈与税の税率が相続税の税率を下回ることが想定される場合には節税効果があることになります。
もちろん、いつ亡くなるかはわからず、亡くなるまでの状況の違いにより消費するお金の額も変わってくるので、亡くなったときの相続財産の額を特定することはできません。
ただ、相続発生時の相続税の税率をある幅の中で想定し、その幅の下限値を下回る贈与税の税率となるように贈与額を逆算して贈与を行うことが、一定の場合には贈与税を支払らったとしても有効な手段になりうることは記憶に留めておいてください。