相続税の節税のイロハ ~生前贈与の活用~ ①

相続税の節税


今回のコラムから何回かにわたって、相続税の節税をテーマにします。
相続税の節税策として代表的なものを紹介します。相続税節税の初級編として位置付けてお読みいただければと思います。
まずは生前贈与の活用についてお話します

贈与税には2通りの仕組みがあって、一つが「暦年課税」、もう一つが「相続時精算課税」です。
この2つの仕組みから納税者はどちらかを選択することができます。
今回は暦年課税の場合について説明します。

「暦年課税」の仕組みは、毎年1月1日~12月31日までの1年間に贈与を受けた財産について確定申告を行い納税します。
1年間に贈与を受けた財産の価額が110万円以内であれば贈与税の申告及び納税は不要です。
この110万円の非課税枠を利用して子や孫に毎年110万円以内で贈与を積み重ねていくことで相続税の節税ができます。
例えば、子供2人、孫2人の4人に、毎年110万円ずつ10年間贈与をしたとすると、贈与者の相続財産は4400万減り(110万×4人×10年)ます。
贈与を受けた子や孫たちには贈与税がかかりません。
110万と聞くとインパクトはないのですが、贈与する人数を増やすこと、長年にわたって贈与を続けることで大きな効果があります。

但し、注意すべきことが2つあります。

1つ目の注意点としては、生前贈与加算という考え方が暦年課税にあることです。
生前贈与加算とは、亡くなった人(被相続人)が死亡日前3年以内に贈与した財産にも相続税が課税される制度です。
先ほどの例で、10年目の贈与を行った直後に贈与者が死亡したとすれば、そこから3年前までの贈与は相続税の課税対象になりますから、1320万円(110万×4人×3年)が相続財産となってしまいます。
令和6年からこの生前贈与加算の期間が、3年から7年に延びるので、より生前贈与加算が増えることになります。
比較的若年のときから計画的に生前贈与を行っていくことが大切です。 

2つ目の注意点は、複数年にわたって贈与をしていく際には、定期贈与とみなされないようにすることです。
定期贈与とは、毎年一定の金額を贈与することが決まっている贈与のことです。
例えば、1,000万円を100万円ずつに分けて毎年贈与するという取り決めをおこない、生前贈与をおこなった場合は定期贈与となります。
定期贈与の場合は毎年の贈与金額が110万円以下であっても、定期贈与の取り決めをおこなった年に「定期金に関する権利」の贈与を受けたとして、贈与額の合計額に対して贈与税が課税されます。
定期贈与か否かの違いは「たまたま毎年贈与をおこなっていた」のか「予め取り決めがあって毎年贈与をおこなっていた」のかです。
生前贈与を定期贈与とみなされないためには贈与する度に贈与契約書を作成するなど、一定の配慮をしましょう。

その他の注意点もありますので、生前贈与をする場合は税理士に相談されることをお勧めします。

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