相続税の節税のイロハ ~不動産の活用~

不動産の活用


今回は、不動産を活用した相続税の節税策についてお話します。

預金という財産を、不動産という財産に組み替えることで、大きな相続税の節税効果を得ることができます。
預金は額面どおりに課税されますが、不動産は市場での売買価格よりも割安に課税されるからです。

相続税を計算するときの財産の評価額は、国が財産評価通達というもので定めています。
建物の相続税評価額は、「固定資産税評価額×1.0」と定められています。
建物の固定資産税評価額は市場の実勢価格の50%~70%程度だと言われていますので、実勢価格で1億円の建物は、相続税を計算するときには5000~7000万円と評価されることになります。

また、土地の相続税評価額は、都市部の場合は「路線価×地積」と定められています。
路線価とは、それぞれの道路に国税庁が付している土地を評価するための価格のことです。

皆さんのご自宅の前の道路の路線価が仮に30万円で、自宅の敷地が100㎡だったとすると、相続税評価額は30万円×100㎡=3000万円と計算されます。
路線価は実勢価格を上回らないように保守的に設定されており、都心であればあるほど実勢価格と相続税評価額に差がつく傾向があります。

東京23区ともなれば、相続税評価額が実勢価格の30%~40%程度になることもあります。
仮に30%とすると、実勢価格が1億円の土地は、相続税を計算するときには3000万円程度と評価されることになります。

一方、都市部でない場合の土地の評価額は「固定資産税評価額×評価倍率」と定められています。
土地の固定資産税評価額は、実勢価格の60%程度と言われていますので、実勢価格で1億円の土地は、相続税を計算するときには6000万円程度がベースとなることになります。

ここまで説明してきたように、預金を不動産に組み替えることで大きな節税効果があるのですが、建物や土地を貸すことで、更に大きな節税効果を得ることができます。

なぜ貸せば評価額が下がるかというと、自分で使っている場合(以下「自用」といいます)には、自分の意思一つでいつでも売却できますが、他人に貸している場合(以下「賃貸」といいます)には、借りている人に建物や土地を使用できる権利があるので、自分の意思だけで売却することができません。

賃貸の場合は自用の場合に比べて制約があるために、その分だけ評価が下がるのは当然のことなのです。
相続税評価額では、賃貸されている建物の評価額は、自用の場合の評価額の70%程度になりますし、賃貸されている土地の評価額は、自用の場合の10%~40%程度になります。
また、土地については、自分でアパートやマンションを建築して、それを賃貸することでも評価額は下がります。
この場合の評価額は、自用の場合の評価額の70%~80%程度になります。

「預金を不動産に組み替え、さらにその不動産を賃貸することで更に大きな相続税の節税効果を得る」という仕組みをご理解いただけたと思いますが、具体的にイメージしていただくために例を記載しておきます。

預金の1億を頭金として銀行から2億円の融資を受け、計3億円で東京23区内に築5年の賃貸マンション(10戸)を購入したとしましょう。
利回り4%として家賃収入は年間1200万、銀行返済額は(借入期間と金利にもより異なりますが)年間ざっと800万といったところでしょうか。
賃貸することで一定のキャッシュフローを得ながら、かつ、相続税の節税にもなります。建物と土地の相続税評価額は3億の40%に圧縮されて1億2000万円になり、銀行借入の2億は負の財産として相続財産から差し引きますから、財産評価額は1億2000万-2億=▲8000万となります(この▲8000万は他の財産と通算できます)。
マンション購入前1億(預金)、購入後▲8000万で、1億8千万の圧縮効果が得られたことになります。仮に税率が50%だとすると、1億8千万×50%=9千万が相続税の節税額になります。

賃貸アパートやマンションを活用した億単位の例を紹介しましたが、マンションの区分所有を活用した数千万単位の節税策ももちろん組めます。
財産総額や圧縮したい金額に応じて、具体的にプランを立てることが必要ですし、どういうリスクがあるのかを知った上でリスク軽減策を講じておくことも大切です。
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