生前贈与の110万円非課税枠の有効活用

あなたが子供に100万円を贈与した場合、贈与税は課されるのでしょうか?

答えは、贈与税は課されませんし、税務申告をすることも不要です。
これは、生前贈与をした場合には、110万円までは贈与税を非課税とする規定があるからです。

贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。
したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません*1

*1贈与税の課税方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、一定の要件に該当する場合に「相続時精算課税」を選択することができますが、このコラムでは暦年贈与について述べています。

では、あなたが子供に200万円を贈与した場合はどうでしょうか?

答えは、贈与税が課されることとなり、税務申告をする必要があります。
しかし課される贈与税額は思っているほど高額にはなりません。

贈与税の課税価格は、200万円(贈与額)-110万円=90万円であり、贈与税額は90万円☓10%=9万円、実効税率は9万円÷200万円=4.5%です。
同様に、300万円を贈与した場合は贈与税額が19万円で実効税率は6.3%、400万円を贈与した場合は贈与税額が33.5万円で実効税率は8.375%、500万円を贈与した場合は贈与税額が48.5万で実効税率は9.7%であり、500万円ぐらいまでは実効税率が10%以下になります*2

*2贈与税の税率は、贈与税の課税価格に応じて10%~55%の幅があります。課税価格が大きいほど税率は高くなるので、贈与額が大きくなればなるほど実効税率は高くなります。 

しかも、この生前贈与の110万円の非課税枠の規定は毎年使うことが可能です。
また、この生前贈与の110万円の非課税枠の規定は、贈与を受けた受贈者ごとに使うことが可能です。

あなたが資産家の方で、相続税の実効税率が10%を超えて20%とか30%とか40%とか高額になる場合には、この生前贈与の110万円の非課税枠を有効に使うことが相続税の節税対策として有効です。

例えばあなたに長男と次男と2人の子供がいたとして、2人に500万円ずつを贈与したとすれば、長男に110万円の非課税規定が使えるように、次男にも110万円の非課税規定を使うことができ、それぞれの納税額は48.5万円(実効税率9.7%)で済みます。
さらに、この2人への500万円の贈与を10年間続けたとすれば、わすか実効税率9.7%で1億円を息子たちに移転したことになります。
あなたが資産家の方であれば相続税の実効税率が30%とか40%とか高額になるケースも多く、その場合にはとても有効な手段になります。

生前贈与の110万円非課税枠の有効活用というテーマについて、本質をご理解いただくために話を単純化して説明してきました。

しかし実際には、皆さんそれぞれに相続税の実効税率が違いますし、資産の内訳も違います。実効税率や資産の内訳が違えば、生前贈与が有効なのかその他の施策が有効なのかも異なります。
また上記の例でいうと、10年間の500万円ずつの贈与が連年贈与(500万円を10回に分けて5,000万円を贈与することが贈与の最初の年に贈与者と受贈者の間で合意されていた贈与)とみなされると、5,000万円の一括贈与とみなされて多額の贈与税を支払わなければなりません。
一連の贈与が連年贈与とみなされないようにするために注意を払う必要もあります。

従って生前贈与の110万円の非課税枠を使おうとする場合は、私たちのような専門家にご相談されることをお勧めします。

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