遺言書を書けば全ての財産を意中の人に相続させられるのか?

遺言

大きなお屋敷の一室で、亡くなった当主の遺言書を今まさに開封しようとしている弁護士の一挙手一投足を、相続人である4人の子どもたちが固唾を飲んで見守っている.。
「次女に全ての財産(現金10億)を相続させる」
という遺言書の内容に、うなだれる長男、次男、長女の3人。

皆さんも映画やドラマで一度は見たことがあるようなシーンではないでしょうか。

相続 遺言書

では、本当に次女は全財産をすべて相続でき、長男、次男、長女の3人は何も相続できないのでしょうか。
遺言書にそう書いてあるのだから、当然その内容の通りになるものと考えている方も多いのではないかと思います。
しかし答えはNOです。
遺言書にそう書いてあったとしても、長男、次男、長女がその内容に納得せず対抗処置をとれば、次女は全財産を相続できません。
なぜかというと、【遺留分】という考え方が民法に規定されているからです。

【遺留分】とは、一定の範囲の法定相続人(兄弟姉妹以外の法定相続人)に認められる最低限の遺産取得分のことです。
全財産の1/2が遺留分の対象になります(親や祖父母など直系尊属のみが法定相続人の場合は全財産の1/3)。
上記の例で具体的に説明すると、10億の1/2である5億円が遺留分の対象であり、対象の5億円を相続人である子ども4人で法定相続分どおりに分けた1.25億円が各人の遺留分ということになります。
従って、長男、次男、長女はそれぞれ1.25億円の遺留分があるから、一定の手続き(遺留分の請求権の行使)をとれば1.25億円ずつは相続できるということです。
次女は、長男・次男・長女から遺留分の請求権の行使があれば、遺産として取得した10億円の中から、各人に1.25億円を支払わなければなりません。

遺留分のことについて敢えて簡易に説明しましたが、遺留分の額の計算や対象者には注意すべき点や詳細検討事項があります。

上記の例のように遺産が現金や預金などの場合には、遺留分の請求権の行使者に対して支払える金銭があるからまだいいのですが、遺産の内容が、父親が経営していた会社の株式(非上場株式)で、次女が会社を引き継ぐために株式の100%(株式の相続税評価額10億円)を相続しなければならない場合はどうでしょうか。
長男、次男、長女から遺留分の請求権の行使を受けた次女は、手元に3.75億円(1.25億円×3)の現金が用意できないため、支払ができず非常に困ってしまいます。
従って、後継者の株式をスムーズにバトンタッチしたいと考えている経営者の方は、後継者が遺留分を他の相続人に支払うことができるように、生命保険等を利用するなど、事前の対策をしておくことが欠かせません。

相続や事業承継、遺留分のことに関してお悩みがある方はぜひご相談ください。
遺留分のことについて敢えて簡易に説明しましたが、遺留分の額の計算や対象者には注意すべき点や詳細検討事項があります

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