土地や建物の相続税法上の評価額②(土地:貸宅地・貸家建付地の評価)

土地建物

前回のブログでは、土地の評価の基本となる自用地の評価について説明しました。
自用地とは、自宅が建っている土地等、他人が使用する権利がない土地(賃貸などの契約によって他人に貸し出したりしていない土地)のことでした。
今回のブログでは、他人に土地を貸している場合(貸宅地)、アパートなどを建てて建物を他人に貸している場合(貸家建付地)等、他人が使用する権利がある土地の評価を見ていきます。
貸宅地や貸家建付地は、他人が使用する権利が土地に貼り付いているため自用地よりも評価額が下がります(他人の権利が土地に及ぶから自用地よりも土地を自由に処分できないから)。
自用地としての評価額から、他人が使用する権利の評価額を減額すれば評価額を算出できます。

<貸宅地の評価>

貸宅地とは、第三者に貸している自分の土地のこと(その第三者が建物を建てて使用することを目的としていること)を指します。
よって、建物を建てない駐車場や資材置き場等として貸している場合には、貸宅地には該当しません。また、無償で貸している場合にも貸宅地には該当しません。
貸宅地の評価額は、以下の算式により計算されます。

貸宅地の評価額=自用地の価格―自用地の価格×借地権割

土地を借りている人が土地を利用する権利のことを借地権といい、借地権割合とは、その土地の権利のうち借地が何割を占めるかを示す数字です。
借地権割合は国税庁のホームページに掲載されている路線価図(倍率地域の場合は倍率表)で確認することが出来ます。
Aさんが所有している土地をBさんに貸しています。Bさんは借りた土地のうえに自宅を建てて住んでいます。
この土地の路線価は20万円/m2、面積は100m2、借地権割合は0.7だったとしましょう。
Aさんが亡くなった場合のこの貸宅地の評価額を計算してみましょう。
まず、自用地としての評価額は、路線価20万×100m2=2000万円です。上記の算式から、この貸宅地の評価額=2000万―2000万×0.7=600万 となります。
Bさんが、2000万×0.7=1400万の借地権をもっているから、Aさんが持っている土地の評価額は、そのBさんの借地権分を引いた価額になると考えていただければわかりやすいと思います。

<貸家建付地の評価>

貸家建付地とは、貸家(家賃をもらって貸す家屋)の敷地の用に供されている宅地、すなわち、所有する土地に建築した家屋を他に貸し付けている場合の、その土地のことをいいます。自分が持っている土地に、貸アパートを建てている場合などをイメージしていただいたらいいと思います。
貸家建付地の評価額は、以下の算式により計算されます。

貸家建付地の評価額=自用地の価格-自用地の価格×借地権割合×借家権割合×賃貸割合

借家権とは、入居者が建物を借りる権利のことであり、借家権割合とは、その家屋の権利のうち貸家が何割を占めるかを示す数字です。
なお2022年5月の段階で、借家権割合は全国一律で30%に設定されています。
Cさんが所有している土地に貸しアパート(部屋数は10室)を建てて家賃収入を得ています。この土地の路線価は20万円/m2、面積は100m2、借地権割合は0.7、借家権割合は0.3、10室のうち8室が入居(賃借割合は8/10で0.8)していたとします。
Cさんが亡くなった場合のこの貸家建付地の評価額を計算してみましょう。
まず、自用地としての評価額は、路線価20万×100m2=2000万円です。上記の算式から、この貸家建付地の評価額=2000万-2000万×0.7×0.3×0.8=1664万となります。
アパートの借家人たちが、2000万×0.7×0.3×0.8=336万の借家権をもっているから、Cさんが持っている土地の評価額は、その借家人たちの借家権分を引いた価額になると考えていただければわかりやすいと思います。



次回のブログでは、一定の場合に土地の評価額を大きく減額することができる「小規模宅地等の特例」の仕組みを見ていくことにしましょう。

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