生命保険を使った相続税の節税策(生前贈与の非課税枠の有効活用編)

前回のコラム(2019年10月20日投稿)では、生前贈与の110万円非課税枠を上手に利用することが相続税の節税に大きく貢献する、というお話をしました。
今回のコラムでは、それを少し応用して、生前贈与110万円非課税枠を生命保険にうまく活用する、というお話をします。

具体的な例をあげてお話した方がわかりやすいので、父から長男への資産移転に生命保険を活用するという例で説明します。
手順は以下の通りです。

  • まず、父から長男に110万を贈与します。110万の非課税枠があるので贈与税は発生しません。
  • 次に、契約者:長男、被保険者:父、保険金受取人:長男、という生命保険(保険期間10年、年間保険料110万、死亡保険金1,200万、10年目の解約返戻金1,120万)に加入します。長男は110万の保険料を支払います。
  • 翌年も、父から長男に110万を贈与し、長男は110万の保険料を支払います。
  • これを毎年繰り返していきます。

父が保険期間中に死亡した場合、長男は死亡保険金の1,200万を受取ります。
この死亡保険金に対する課税は長男の一時所得となります。
仮に保険加入から8年目に父が死亡したとすると、一時所得の金額は(1200万-110万×8年-50万)÷2=135万となり、135万を他の所得と合算して長男は確定申告をすることになります。
ここで注目していただきたいことは、(1)長男は死亡保険金1,200万を受取っていながら課税対象が135万に圧縮されている点、(2)父の相続財産が880万(110万を8年間贈与したため)圧縮されている点、です。
この2つの圧縮効果により大きな節税効果になっています。

また、父が保険期間中に死亡しなかった場合は、長男は解約返戻金1,120万を受取り保険契約を終了させます。
この場合でも、父の相続財産が1,100万(110万を10年贈与したため)圧縮されており、節税効果があったといえます。
上記の例は、毎年の贈与額を贈与税の非課税枠である110万とし、110万の保険料を支払うパターンでしたが、毎年の贈与額を200万、300万、400万と増やしても効果があります。

仮に贈与額を300万として見てみましょう。

1 まず、父から長男に300万を贈与します。
長男は贈与税を19万支払います(課税価格は300万-110万=190万、税額は190万×10%=19万)。
2 次に、契約者:長男、被保険者:父、保険金受取人:長男、という生命保険(保険期間10年、年間保険料300万、死亡保険金3,500万、10年目の解約返戻金3,050万)に加入します。長男は300万の保険料を支払います。
3 翌年も、父から長男に300万を贈与し、長男は300万の保険料を支払います。
4 これを毎年繰り返していきます。
父が保険期間中に死亡した場合、長男は死亡保険金の3,500万を受取ります。
この死亡保険金に対する課税は長男の一時所得となります。

仮に保険加入から8年目に父が死亡したとすると、一時所得の金額は(3500万-300万×8年-50万)÷2=525万となり、525万を他の所得と合算して長男は確定申告をすることになります。
(1)長男は死亡保険金3,500万を受取っていながら課税対象が525万に圧縮されている点、(2)父の相続財産が2,400万(300万を8年間贈与したため)圧縮されている点の2点で節税効果があります。長男は8年間で計152万(19万×8年)の贈与税を支払いましたが、それに余りある効果があったといえます。

また、父が保険期間中に死亡しなかった場合は、長男は解約返戻金3,050万を受取り保険契約を終了させます。この場合でも、父の相続財産が3,000万(300万を10年贈与したため)圧縮されており、大きな節税効果があったといえます。
長男は10年間で計190万(19万×10年)の贈与税を支払いましたが、やはりそれに余りある節税効果です。

生前贈与110万円非課税枠を生命保険にうまく活用するというテーマについて、その効果を説明してきました。

しかし、その実施にあたっては注意すべき点があります。毎年の贈与が連年贈与(上記の例でいうと110万円を10回に分けて1,100万円を贈与することが
贈与の最初の年に贈与者と受贈者の間で合意されていた贈与)とみなされると、一括贈与とみなされて多額の贈与税を支払わなければなりません。

一連の贈与が連年贈与とみなされないようにするために注意を払う必要があります。
その他にもいくつか実施にあたっての注意点があります。
従ってこのスキームを使おうとする場合には、私たちのような専門家にご相談されることをお勧めします。