●株価の圧縮
これまで見てきたように、自社の株式の株価が高い場合には、事業承継上さまざまな問題が生じます。
スムーズな事業承継を行うためには、自社の株式を引き下げる対策が必要となります。
財産評価基本通達における株価の算出方法を詳しく説明することはここでは省略しますが、損益計算書上の利益が圧縮できれば株価は圧縮され、貸借対照表上の純資産額が圧縮できれば株価は圧縮され、時価純資産価額(ある時点での全ての資産の相続税評価額から全て負債の相続税評価額を引いた額)が圧縮できれば株価は圧縮されると大掴みしておいて下さい。
株価を引き下げるための施策として一般的には、組織先編、利益圧縮、資産管理などの手法がよく使われます。
①組織再編
株式交換、株式移転、会社分割、合併など組織再編を行う(例えば持株会社を創設するなど)ことにより経営上のメリットを得つつ、組織再編に伴う株価の圧縮効果を享受する方法です。
②利益圧縮
役員退職金の支払い、法人向け生命保険の活用、短期の前払費用の損金計上、決算賞与の支給、役員報酬の増額、企業年金への加入、オペレーティング・リースの活用などの方法により一時的に利益を圧縮します。
③資産管理
資産を処分すること(例えば、5千万の含み損がある遊休資産を処分すれば5千万圧縮)、資産を組み替えること(例えば、取引上の時価(1億)よりも相続税評価額(5千万)が低い賃貸用不動産を購入すれば5千万圧縮)により純資産価額を圧縮します。