①株式の相続税評価額が高額なため、後継者が株式を取得できない(相続税が高額になり支払うことができない)
株式の相続税評価額は、出資した資本金の額ではありません。財産評価基本通達にその評価方法は定められていますが、1株5万円の額面の株式の評価額が100万円だったり200万円だったりすることも珍しくはありません。
例えば、A社長が1000万円を出資(1株5万円額面で200株をA社長が所有)したB社の株式の評価額が200万円だったとすると、200万×200株=4億円となります。A社長の相続財産がこのB社株式の他は預金が5000万であり、B社の後継者となる長男CがB社株式200株とその預金5000万を相続したとすると、相続税額は1.5億円ぐらいになります。
長男Cが預金を1000万しかもっていなかったとすると、自分の預金と相続した現金を合わせても6000万円しかないため、相続税を支払うことができず、B社を承継することができないという問題が生じます。
②相続財産の大半が自社株式であるため、兄弟間で相続を巡り争いが生じる
上記のA社長のケースで、長男Cの他に次男Dと三男Eがいたとしましょう。
後継者である長男CがB社を安定的に経営していくためには、B社の株式の過半数以上を取得する必要があります。仮に、長男CがB社株式の70%にあたる140株を取得しようとすると、長男が140株×200万=2億8千万を相続し、次男Dと三男Eが
それぞれ8500万ずつを相続することになります。これで次男Dと三男Eが納得すればいいのですが、納得できなければ相続を巡って兄弟で揉めることになります。
また仮に、長男C・次男D・三男Eで法定相続分どおりに財産を分けるとすると、4億5千万(自社株式4億+預金5千万)を均等に3分割して1億5千万になるので、長男CはB社の株式を議決権の37.5%である75株しか取得できず過半数に達しません。B社の株式は後継者である長男Cの他、次男D・三男Eも保有することとなり、経営方針を巡って兄弟で揉める要因になります。